スマート・フォーラム通信 通算292号

「暗雲広がる同一労働同一賃金(日経11/4)」の真意は?  日経新聞の上級論説委員の水野裕司氏の最高裁判決に関する論説。 この人は労働時間規制に反対する立場なので、同一労働同一賃金を批判 しているのかと思うきや・・・メトロコマースなどの最高裁判決が非正 規差別をなくそうとする同一労働同一賃金の流れを否定していると批判 しているのだ。 正規・非正規の待遇格差をめぐる5件の最高裁判決の 最大のポイントは、正規で働く人材の確保という目的が賃金制度にあるなら、 格差は認められると判断した点。賞与や退職金の支給には、「正職員・ 正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的」 があるとした。これまでも「有為な人材の確保」のためには正社員の厚遇は 不合理ではないとした判例があるが、今回の最高裁はそれを一歩進め、正規 雇用そのものの意義を認め、日本型雇用システムにお墨付きを与えたといえる。  この判決は、職務や責任の程度などが同じなら、雇用形態に関わらず同じ 待遇にするという「同一労働同一賃金」の先行きに暗雲を広げる。 日本企業の大半は、職能給制度という形で賞与や退職金を勤続年数に 連動させている。こうした企業における待遇格差は不合理とはみなさ れにくくなる。非正規雇用はコストがかさむ正規雇用を維持するために 企業が拡大してきた面がある。最高裁判決はこの二極化構造の温存に つながらないか。年功制や順送り人事を廃止し、職務ごとに社内外から 最適な人材を起用するジョブ型雇用を広げていくことは、 格差是正の地ならしの意味も出てくる。 正規労働者の雇用が優遇されており、賃金も払い過ぎているという前提に 立った主張には全く同意しかねる。ジョブ型雇用でなければ格差が是正さ れないというのは本末転倒だ。格差を是正すればジョブ型雇用になるかも しれないが、常に求人が求職を上回る状況でなければ成り立たない。  なお、今回の最高裁判決が、従来からの経営者の姿勢にずいぶん気を 遣った判決だという意味においては同感である。

*******************************
横浜市鶴見区豊岡町20-9-505
よこはまシティユニオン「スマート・フォーラム」
http://smartforum.sakura.ne.jp
*******************************

戻る