スマート・フォーラム通信 通算325号

消えゆく正社員の手当 同一労働同一賃金の余波、反発で訴訟(日経10/25)  非正規社員に正社員と不合理な待遇差をつけることを禁じた「同一労働同一賃金」法制に合わせて、 正社員の手当を削る企業が増えている。正社員が反発して訴訟に発展する例も出てきた。  済生会山口総合病院(職員数約660人)の労働組合(約60人)に加入する正規職員9人は、 同意していない就業規則の改正で扶養手当を削られるのは違法な不利益変更だとして山口地裁に提訴、 削減分の支払いを求めている。同病院では2020年10月から、正職員だけに払っていた扶養手当や住宅手当を、 全職員向けの子ども手当(0歳から22歳までの子に関し6000円~1万円)ないし保育手当 (0~3歳の子に関し1万円、こども手当との併給なし)と住宅補助手当に改めた。原告 の9人は月540~3000円減収になるという。  病院側代理人弁護士は、一部の正職員にとって不利益となることを否定せず、 「非正規職員にとっては利益変更だ」とする。旧扶養手当は主たる扶養者であることが受給条件で、 対象は全員が男性だったと指摘。「女性職員が77%の山口総合病院では男性中心で時代に合わない」 とする。「職員の過半数代表の同意があり、労組とも誠実に交渉した」とも。  一方、職員側の代理人弁護士は、病院の黒字は4億6906万円で、「従来の正職員向け手当を 非正規に適用しても財政問題は起きない。手当改廃は人件費抑制が目的だ」と反論。 さらに同じ済生会の山口県内の施設などで手当改廃がないことや、病院側が全職員の意見集約 をしていない点からも合理性はないとする。  正社員の手当改廃が円滑に進んだ例もある。写真素材サイトを運営するピクスタは、 子1人に月1万円出していた子ども手当と、結婚祝い金、出産祝い金各1万円を4月に廃止。同時に、 正社員・アルバイトを問わず誕生月に1万円を贈る制度を始めた。それだけでは不利益になるため、 子ども手当を受けていた社員の基本給に旧子ども手当相当額を上乗せ、支給額を維持した。 人事総務部の野田えり氏は、事前説明会などで、「結婚・出産など個人の選択ではなく、 多様なライフスタイルに対応できる手当とするのが目的」と説明。  会社がいかに丁寧に制度改変を説明し、必要に応じて減額分を補償するなどの措置を とることができるか。経営側の努力が問われている。ちなみに欧米では、正規と非正規の 福利厚生などの差を巡る紛争は少ない。欧州では、雇用形態を問わない均等待遇原則を定めた EU指令があり、そもそも正規社員と非正規社員との待遇差が少ないとされる。 一方、米国では、福利厚生の代表的な例は、企業が提供する健康保険と年金。 正規労働者の52%が健康保険でカバーされる一方で、非正規は推計8%にとどまり、 差は歴然。だが、米国では「待遇は転職で改善するもの」という認識が強く、 裁判に発展する例はほとんど見られない。 *******************************
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