スマート・フォーラム通信 通算353号

男女間賃金格差の開示義務付け 効果や副作用の検証を(東大教授山口慎太郎)(日経9/5)  欧州の一部で導入されていた男女間賃金格差の開示義務付けが、日本でも今夏から従業員 300人超の企業を対象に取り入れられた。企業内のジェンダー格差を可視化し、是正のきっかけ につながることが狙いだが、実際の効果は? デンマークでは2006年から35人以上の企業が、 労働組合など労働者代表に男女間賃金格差の開示を実施している。 研究によると、情報開示の義務付けにより、男女間賃金格差は2%縮小した。 義務付け以前の男女間賃金格差は15%だったからそれなりの効果があったといえる。 女性の雇用も内部昇進者も増えた。一方で従業員1人当たりの売上高が減少したという 結果も報告されている。理由ははっきりしないが、自分の給料が同僚と比べて低いことに 気づいて士気が下がった可能性が考えられる。さらに、賃金総額も下がった。情報開示の 義務付けを口実に男性社員の賃金を抑制したためと思われる。実際、データを詳しく見ると、 女性の賃金の伸びは変わらないものの、男性社員の賃金の伸びを抑えることで男女差を解消 したことがわかった。政策が期待した成果を上げたか、意図せざる副作用がなかったかなど検証が必要だ。  前提として、そもそもデンマークの男女間賃金格差は2006年に15%しかなかったのだ。 男性100とすれば85ということになる。2018年のOECDのデータによると、男性100として女性90と 世界一格差がない。ちなみに日本は76.5。そして労働組合の組織率も低くなってきたとはいえ、 2018年OECDのデータで、世界第2位の66.5%。ちなみに一位はアイスランドの90で断トツ、 日本は17.5%・・・。しかも職業別の労働組合運動であり、キャリア・アップ、転職支援 なども充実していることでも有名だ。  ユニオンとしては、闘えない企業別労働組合がじり貧状態の現状を見ると、 山口教授が「副作用」とした賃下げ効果の方がはるかにあり得る。今こそ積極的に 賃上げ運動をしないと、男女間の分断だけを招いてしまう。また、日本では、非正規 労働者の間でも男女間格差が大きい。そこに依拠したユニオン運動が今こそ求められている。   データの数字は、以下の「令和4年3月18日 内閣府男女共同参画局資料」などから。 https://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/kikaku/55/pdf/1.pdf

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