スマート・フォーラム通信 通算374号

ポストコロナの経済  ひずみ残した『正常化』(毎日6/1)   政府が、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ経済の「正常化」を図っている。 1~3月期の国内総生産(GDP)も消費の持ち直しでプラス成長を回復し、コロナ前の 規模に近づいた。問題は、コロナ禍で露呈した深刻な格差の是正にはほとんど手が 付けられていないことだ。  打撃が集中したのは、賃金が低く雇用も不安定な非正規労働者だ。職を失ったり、 賃金が大幅カットされる人が目立った。政府は正規労働者を増やす方針を示しているが、 横ばい状態で、1~3月の非正規の総数は2112万人に上り、働く人全体の37.2%とコロナ前 の19年の38.3%と、ほぼ同じ水準だ。物価高の中で非正規では食費を削らざるを得ないが、 経済活動が活発化する中で、貧困が見えにくい状況になっている。  格差の実態を精緻に分析した『中流崩壊』などの著者である橋本健二・早稲田大学教授は、 「企業は非正規を増やして賃金を多少上げるだろうが、それで十分と判断し、人件費負担が 重くなる正規化には消極的姿勢を変えないのではないか」、「不安定な非正規で働く人は生活 不安が消えず、支出を増やさない。消費全体もコロナ下で抑えられた反動が出るだけで本格的 には増えないだろう」と予測。  人類学者の長谷川眞理子・日本芸術文化振興会理事長は、「長い人類史の中で、20世紀後半以降 の社会は異常だ。資本主義が行き過ぎ、もうけ優先で競争した結果、格差が著しく拡大した。 人間の喜びの原点は、皆が協力して食料を収穫し、焚火を囲んで分け合う狩猟採集生活にある。 価値観を見直すことが必要だ」と語る。  成長一辺倒ではなく、支え合う社会に転換する政策が求められている。

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