高レベル放射性廃棄物(原発のゴミ)の行方は?


「核燃料サイクル」に固執する政府

高レベル放射性廃棄物は、原発の運転に伴って発生する使用済核燃料(=原発のゴミ)のことです。政府は、この使用済核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムやウランを再利用する「核燃料サイクル」を推進しています。使用済核燃料を燃料資源(有価物)として位置づけているのです。

 「核燃料サイクル」の要は、使用済核燃料からプルトニウムやウランを取り出す再処理工場が機能することです。青森県の六ケ所村再処理工場は、電気事業連合会などが出資した日本原電㈱が1993年に着工。1997年の完成予定でしたが、設計ミスや度重なる施工不良で26回も延期され24年9月の完成予定とされましたが、24年8月に、完成は26年度中と変更。事業費も当初7600億円が17兆5千億円となりました(24年6月)。日本原電歴代社長の多くは出資金大手の東京電力出身ですが、誰一人この浪費の責任を追及されていません。この巨額の事業費は、原発推進の国策に基づき、電力事業各社が電気料金に上乗せし、全国民が負担する仕組みになっているのです。

「地層処分」は不平等で危険な政策

使用済核燃料からプルトニウムを取り出した後に残る放射能レベルの高い廃液は、ガラス原料と融かし合わせてステンレス製容器の中で固めます(=ガラス固化体、直径40㎝、長さ1,3m、重さ500㎏)。これが高レベル放射性廃棄物です。1本に広島原爆30発分の「死の灰」を含み、取り扱いは遠隔操作とロボット以外に方法がありません。

 国際的には、使用済核燃料を「地層処分」する国が多数です。地下深く(300m以上)に埋めることで生活環境から隔離して最終処分とし、その後は管理する必要がないとしています。日本では、2000年制定の「最終処分に関する法律」で「地層処分」を進めることを決定し、その実施主体を原発環境整備機構(ニューモNUMO)とし、処分地の選定(文献調査・概要調査・精密調査の3段階)を進めています。

 廃棄物処理の一般原則は、発生者責任と受益者負担です。原発のゴミや「ガラス固化体」の放射能レベルが自然界にあるウラン鉱石レベルまで低下するのに約10万年の時間が必要です。原発で利益を得るのは現世代ですが、高線量放射能リスクと管理は次世代にも及ぶため、世代間の不平等を生みます。また、10万年もの間、亀裂が入らず、地下水の影響も受けない強固な岩盤層は日本のどこにもありません。昨年10月、300名を超える地質学者や研究者が「地層処分」に反対し、中立的な機関を設けて検討すべきという意見書を発表しましたが、この貴重な提言は無視され続けています。世代超えて多大な影響を与える原発ごみ処理問題が、国会でも十分審議されず、「地層処分」が唯一の方法としてまかり通っているのが現状です。地上で保管し、より安全な処理方法を研究することが必要です。

これ以上、原発ゴミを増やすな!

最終処分地の選定について、今年11月、北海道・2町村(寿都町(すっつちょう)神恵内村(かもえないむら))の文献調査が終了し、報告書が北海道知事に提出されました。第2段階の概要調査に進むには知事の承認が必要です。文献調査では2町村にそれぞれ20億円の交付金が払われ、第2段階に進めば70億円が払われます。税収の乏しい自治体にとって、地域振興を図るうえで交付金は大きな魅力です。政府とNUMOが進める「地層処分」は、弱小自治体の困窮に付け込んだ卑劣な政策ともいえます。実際、文献調査を巡って住民間で対立が起こり、地域の分断が起きています。現在の処分方法や処分地選定のやり方には妥当性も正当性のかけらもありません。

 私たちができることは、原発の稼働を中止し、これ以上、原発のゴミを増やさないこと、原発に頼らない社会・経済・エネルギー政策に一刻も早く転換することです。国会だけでなく、地方議会でも熟議すべきだと思います。 【組合員Y】

故長尾光明さんの闘いを胸に

よこはまシティユニオン組合員の長尾光明さん(故人)は福島第一原発で働き、被ばくが原因で退職後に多発性骨髄腫(血液のガン)を発症し労災認定されました。損害賠償を求めて東京電力を相手に裁判を起こしましたが、東電は労災認定はおろか病名すら否定。裁判所も長尾さんの請求を棄却しました(最高裁2010年4月)。

よこはまシティユニオン組合員の長尾光明さん(故人)は福島第一原発で働き、被ばくが原因で退職後に多発性骨髄腫(血液のガン)を発症し労災認定されました。損害賠償を求めて東京電力を相手に裁判を起こしましたが、東電は労災認定はおろか病名すら否定。裁判所も長尾さんの請求を棄却しました(最高裁2010年4月)。

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