
イギリスは再処理をあきらめ、プルトニウムを廃棄
今年1月、イギリス政府は、原子力発電所で使った「使用済み核燃料」を再処理して取り出した民生用のプルトニウム100㌧余を「ゴミ」(廃棄物)として地中に廃棄する方針を発表しました。
イギリスは、「使用済み核燃料」からプルトニウムを取り出し、新しい燃料に混ぜて、もう一度原子炉で燃やす「核燃料サイクル」を目指していました。日本も含めた他の国の分も再処理してビジネスとして成り立たせようとしましたが、技術的に困難で、あまりにも費用がかかるため、ほとんどの国が、「核燃料サイクル」から撤退してしまいました。再処理する経済性は失われ、再処理施設から放出される放射能の被害も大きな問題になりました。「使用済核燃料」の再処理をやめ、核燃料サイクルをあきらめたイギリスは、使い道を失ったプルトニウムを廃棄することを決めたのです。
青森県六ヶ所村の再処理施設は30年経っても未完成
イギリスが撤退したので、商業用に「使用済み核燃料」を再処理しているのはフランスだけになりましたが、日本は再処理をあきらめていません。茨城県の東海村に最初の再処理施設を作り、1993年からは青森県六ヶ所村に大規模な再処理施設を作り始めましたが、30年経つ今でも完成せず、27回も竣工予定を延期。総工費は15兆円を超える見込みです。
人が近づけないほど放射能が強い「使用済み核燃料」を、わざわざ切り刻んで強力な酸で溶かし、ウランとプルトニウムを取り出すのが、「使用済み核燃料」の再処理です。そのときに生まれる「高レベル放射性廃液」(もちろん人は近づけません)をガラスで固めることに失敗して、東海村の施設も、六ヶ所村の施設も、現在動いていません。しかも、中途半端に施設を動かしたために、放射能で汚染された施設の中に人間が入ることができず、工事は遠隔操作で行わなければなりません。
日本はプルトニウムも廃液も保管中
再処理施設が止まり、ガラスで固めることができなかった「高レベル放射射性廃液」は、どうなっているのでしょうか。東海村の施設で保管されている廃液は、2028年度までにガラスで固める予定でしたが、10年延期されました。
アクティブ(稼働)試験の失敗などが続いた六ヶ所村の施設は、26年度の竣工を目指すと言っていますが、原子力規制委員会の審査もまだ通っていません。廃液の一部は、設備の中に残されており、2022年には、廃液が高温にならないように冷却する水の供給が止まるという事故を起こしています。 それでも日本は、イギリスとフランスに再処理を委託していたので、現在、国内に約8.6㌧、イギリスに約21.7㌧、フランスに約14.1㌧、合計で約44.5㌧ものプルトニウムを所持しています(2023年末)。核兵器数千発分といわれ、核兵器に転用されないよう国際的に厳しく監視されています。
原発を止め、再処理もやめよう
「高レベル放射性廃液」は、ガラスで固めて容器に入れ、何万年ものあいだ、地下深くで眠らせなければなりません。廃液の状態で漏れたり爆発すれば、福島第一原発以上の被害がもたらされます。
原発を止めれば、使用済み核燃料はこれ以上増えません。原発の1年分の放射能を1日で放出するといわれる、きわめて危険な再処理もやめて、大量に生み出してしまった、今ある「核のゴミ」を安全に保管・管理することに集中するべきです。それだけでも、どれだけの費用と時間がかかるのか、どれだけの人が放射能を浴びながら仕事をしなければならないのか(被曝労働)わかりません。
1日も早く、原子力発電・核燃料の再処理/核燃料サイクルをやめる決断をするべきです。【組合員N】
■故長尾光明さんの闘いを胸に
よこはまシティユニオン組合員の長尾光明さん(故人)は福島第一原発で働き、被ばくが原因で退職後に多発性骨髄腫(血液のガン)を発症し労災認定されました。損害賠償を求めて東京電力を相手に裁判を起こしましたが、東電は労災認定はおろか病名すら否定。裁判所も長尾さんの請求を棄却しました(最高裁2010年4月)。
■原発で働く労働者と共に闘います
原発は電力会社を元請とした4~8次の下請会社で稼働しています。3.11以降、多くの労働者が福島第一原発の収束作業に関わり、被ばくを余儀なくされています。東電福島第一原発の収束・廃炉作業や九電玄海原発の定期検査に従事し、被ばくが原因で白血病になったあらかぶさん(40代男性)は2016年11月22日に東京電力と九州電力を相手に損害賠償を求めて提訴し闘っています。ぜひ多くの皆様の傍聴支援をお願いします。
よこはまシティユニオン組合員の長尾光明さん(故人)は福島第一原発で働き、被ばくが原因で退職後に多発性骨髄腫(血液のガン)を発症し労災認定されました。損害賠償を求めて東京電力を相手に裁判を起こしましたが、東電は労災認定はおろか病名すら否定。裁判所も長尾さんの請求を棄却しました(最高裁2010年4月)。
■職場の問題、いつでもご相談を!
東日本大震災や原発事故を忘れないため毎月11月に街頭宣伝を行っています。労働組合としてできる事は何かをいつも考えています。「福島どころじゃない」「自分の仕事と生活が大変」という方もいるでしょう。そんなあなたこそ、諦める前に一度ぜひ職場の問題をユニオンに寄せてください。一緒に解決しましょう!